日本文化の象徴的な装いである「着物」や「浴衣」ですが、両者の違いについて問われたら、返答に窮する人も多いかもしれません。花火大会や結婚式など、和服を着る機会は意外とありますが、使い分けに悩むシーンも出てくるのではないでしょうか?そこでこの記事では、着付けや素材、用途などの多角的な視点から、着物と浴衣の違いを解説していきます。
着物と浴衣にはどんな違いがある?
着物と浴衣の違いについて触れていく前に、前提として、「浴衣は着物の一種である」 ことを覚えておきましょう。今回は、6つの観点(用途・生地や素材・仕立て方・着付け・帯・履物)から、両者の特徴と違いを確認していきます。
用途の違い
用途の違いを一言でまとめると、「浴衣は正装として用いられることはなく、フォーマルな場には適さない」です。これだけ覚えておけば、使い分けに悩むことも少なくなります。
・着物
着物はカジュアルとフォーマル、どちらの場で着ても問題のない着衣です。ただし、留袖や訪問着、振袖など、ふさわしい着用シーンに応じていくつかの種類に分かれています。着物を着て出かける際には、適切な種類を選ぶことを心がけておきましょう。
・浴衣
日常生活において、夕涼みやくつろぐことを目的として生まれた普段着が浴衣です。そのため、夏祭りや花火大会など、カジュアルな服装で行ける場所であれば、どこでも着ることができます。
生地や素材の違い
木綿や麻、ポリエステルなど、生地に使用される共通素材も多い着物と浴衣ですが、それぞれ趣が異なっています。
・着物
着物に用いられる生地の材質と言えば、絹やウールが代表的です。涼しさを重視した浴衣と比べると、耐久性や見た目の美しさが優先される傾向が見られます。
・浴衣
浴衣は、昔から綿が主流の素材です。そのほか、さらに利便性が高い綿と麻の混合素材も好んで用いられています。これは実用性が求められる普段着ならではの特徴と言えるかもしれません。
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仕立て方の違い
表地のみで、裏は全く付けない仕立て方を「単位仕立て」と呼びますが、これは着物と浴衣の両者に共通しています。両者の大きな違いとなるのは、「衿(えり)」の仕立て方です。
・着物
着物では、最もオーソドックスな「袷仕立て」や、好みの衿幅に調整できる「広衿」などが、多く見られる仕立て方です。夏物の着物において、浴衣と共通する「単位仕立て」が用いられる際には、下半身の透け感を和らげる「居敷当て」を付けることもあります。
・浴衣
子どもや男性によく用いられる「棒衿」と、カジュアル使いの着物で見られることもある「ばち衿」が一般的です。「棒衿」は、背中の中心から衿先まで、均一な衿幅が特徴的な仕立て方。一方、「ばち衿」では、衿の肩回りから衿先に向かうにつれて、自然に幅が広くなっていきます。
着付けの違い
着物と浴衣、両者における着付けの違いは、必要となる工程数です。「着物は複雑、浴衣はシンプル」と言ったところでしょうか。
・着物
着物の着付けは「肌襦袢」から始まり、「裾除け」、「長襦袢」、「着物」までの工程をしっかりと踏む必要があります。紐の本数も相対的に多くなりますが、その分、きちんと補正されるため、最終的なシルエットは美しくなることが特徴です。また、汚れ防止の効果がありますので、夏用の着物でも、「長襦袢」は必ず着るようにしましょう。
・浴衣
浴衣の醍醐味のひとつが、着付けのしやすさです。工程数も少なく、補正についても、汗取りタオルを1枚巻くだけで済んでしまいます。なお、元来は必要ありませんでしたが、現代では下着として「肌襦袢」と「裾除け」を着用することが一般的です。
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帯の違い
帯に関しては、着物も浴衣も豊富なコーディネートを楽しむことができますが、幅の広さのほか、素材や使用するアイテムに多少の違いが見られます。結び方に関しては男女差があり、遊び心や個性の主張が優遇されているのは女性です。また、同じ女性の場合であっても、着物より浴衣のほうが、この傾向が強く見られます。
・着物
着物の帯は幅が広く、男性の場合は、着物と浴衣で共通して「角帯」と呼ばれる帯を使用します。一方、女性の場合は「帯枕」や「帯締め」、「帯揚げ」など、帯周りのアイテムが充実。これらのアイテムをうまく組み合わせることで、華やかさを演出できます。
・浴衣
着物と比べると、浴衣の帯は短いです。しかし、浴衣と違って帯周りのアイテムを使用する必要がない分、結び方のバリエーションが豊かになっています。帯に使用される素材もさまざまなので、女性の場合は特に、幅広いコーディネートを楽しむことが可能です。
履物の違い
浴衣では男女差がない履物ですが、着物ではそれぞれ分かれています。オシャレは足元からと言った言葉もありますが、せっかくの和装を台無しにしないためにも、それぞれの決まりについて確認しておきましょう。
・着物
着物では、女性は「草履」、男性は「下駄」や「雪駄」が一般的です。時代に合わせて、オシャレなものも続々と登場しています。
・浴衣
浴衣での履物は、男女ともに下駄となっています。渋いイメージですが、用途や形により名称もさまざまなので、ぜひお気に入りの一足を探してみてください。
まとめ

和服と聞くと敷居が高く感じるかもしれませんが、近年では普段着として使用できる、カジュアルな着物や浴衣をファッションとして楽しむ人も珍しくありません。同じように見えても、バリエーションはさまざまです。ぜひこの機会にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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この記事はにほんご日和に掲載された記事をKARUTAにて一部再編集しています。
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